温度は嘘つき

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 どんっ、と音がしそうなほど強く相手を突き飛ばし、マリアはもつれそうになる足で必死に逃げる。途中、足が変な方向に曲がり激痛が走るも、今は気にしていられなかった。 「なんだよあいつ、ノリ悪ぃなー」 「ねぇ~、あんな奴ほっといて良くない? マリアってちょっと変じゃん」  背中から聞こえた二人の声に、知らず視界がぼやける。 それでもマリアは、ともすればぐちゃぐちゃになってしまいそうな心をつなぎとめ、必死で走った。 ・ ・ ・  走って走って走って、頬を切る風が冷たさを感じるほどになって、マリアはようやく意識を現実に戻す。  あいつらから逃げるために、随分と走り続けてしまっていたようだ。 思わず空を見上げれば、闇色ののっぺりした空にはきらめく星々が瞬いている。体もやけに熱いしよっぽど夢中で走り続けていたようだ。  マリアは若干ふわふわする頭を押さえながら、とりあえず落ち着くために大きく息を吐きだす。そして改めて辺りを見回し――、思わず息を呑んだ。 「……え?」  整然と並ぶ石の山。それが墓石だと気付くのに、そう時間はかからなかった。  見渡す限りの墓石は、一桁では足らない。ずらりと並んだ黒々とした石は、見るだけのっぺりとしていて触れずともそれだけで冷たさを感じるようだ。 そこに来てようやく、ここが町外れにある集団墓地なのだろう事に気づいた。     
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