温度は嘘つき

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正体不明の物が怖い気持ちは、勿論ある。だがそれ以上に、今は自分以外の誰かの存在をみつけて一緒にいたかった。  太陽と比べれば心許ない月明かりを頼りに、転ばないよう気を付けて歩く。 そうして歩みを進めていけば、音は勿論、確かな人影も次第にはっきりと見えてきた。  遠目からでは分からなかったが、墓場の中でも高台に位置するそこに誰かがいる。シルエットから察するに、大人ではない。 もしかして子供なのかと考えながら、マリアは更に足を速める。 ……ざくっ  距離が近づくほどに、音もはっきり聞こえてくる。 どうやら人影は、何かの穴を掘っているらしい。影絵のように見える大きなシャベル、そして時折空を飛ぶ土。  ――こんな時間に、何をしているんだろう ……ざくっ、ざくっ、ざくっ  胸に疑問を抱いたまま、だんだんと小走りに影へ近付く。墓石の列を抜け、高台に足をかけて上り始める。そして登り切った先に――、影は確かにいた。その事にマリアは安堵の吐息をつきつつ、ゆっくりと口を開く。 「あの、君……。一体ここでなにして―――」  ――はずだった。 「なに……、してんの」  マリアは視界に映ったその光景に息を呑み、確認するように思わず問いなおす。  見えていた影は、確かに人間のものだった。     
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