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だが影の少年は、そんなマリアの行動はどうでも良いらしい。
まるで面倒だとでも言うように眉をひそめ、またシャベルを地面に突き刺す行動へ戻って行った。
――それが、今に至るいきさつだ。
「愛してる! 愛してる!! 僕は君を、愛してる!!」
棺の中におさめられた女性の死体の頬を包み込むように手で覆い、少年は狂ったように呟き続ける。その顔はどこか恍惚としたもので、ただでさえ血の気の引いているマリアの手先が更に冷たくなるのを感じた。
マリアとて、死体を見た事がないわけではない。
お葬式に行った事もあるし、そこで死者との別れも経験した。そのまま埋葬していく様だって、間近で見た事もある。
だがこんな死体は、初めてだ。
埋められて、少なくとも数日は経っているのだろう。言葉にできないような酸っぱい、肉の腐ったような匂いがふたを開けた時から蔓延している。顔もまるで泥を塗りこんだような土気色で、見ているだけで吐き気を催す。
「あぁ……綺麗、だ」
しかし少年には、マリアとは違う光景が見えているのかもしれない。
まるで美しい彫刻でも見るようにうっとりと死体を眺め、上半身だけを墓石にもたれかからせるように起こす。そして残る下半身の膝を立たせ、出来る限り大きく足を開かせた。
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