束の間の休息

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 返す言葉もない。甘い言葉には気を付けよう。借金が原因で離婚届を突きつけられたら立ち直れない。 「まあ、その話は置いといて、その後はどうしたの?」 「ホームレスの人を探したよ。ガラガラを持っていた人を見てないかって。見つからなかったけど」 「ホームレスを探すって……大丈夫だったの? 変な人に絡まれたりしてない?」 「大丈夫だよ。みんな優しい人だった」 「ふーん……」  疑いの目を向けられる。好美の勘は異様に鋭い。女の勘というやつだろうか。バクバクと心拍数が上がるのを感じる。 「まあ無事に帰ってきたから良いか。それより、明日からまた取り憑いた物っていうの探すんでしょ?」 「うん、今度はキッチンの物を出す予定」 「あんまり汚さないでね」 「善処する」  深く聞かれなくてホッとする。これ以上追求されるとボロが出てしまう。  ホッとしていると玄関の方から「ただいまぁ」と、しわがれた声が聞こえてきた。どうやら好美の両親が散歩から帰ってきたようだ。  僕達は話を切り上げて、好美はお茶を片付けに、僕は旅行に持っていった物の片付けを始めた。そして疲労からか、ある程度片付けをした後は泥のように眠ってしまった。
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