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「ただいま。お義父さんとお義母さんは?」
「二人で散歩。良いよねー私も老後はおさむくんと散歩したい」
「そのためにも、今できることを頑張らなくちゃね。はい、これお土産」
好美はお菓子が入った袋を受け取ると、待ってましたと言わんばかりの顔で中身を覗き始めた。お菓子を確認すると、今度は早く食べたいといった表情に変わる。
「お茶! 淹れるね!」
「うん、ありがとう。ああそうだ、体調はどう?」
「今日は良い感じ。おさむくんが帰ってくるって分かってたからかな」
好美は軽い足取りでキッチンへ向かう。どうやら本当に調子が良いようだ。酷い時は足を引きずるから危なっかしい。
座布団に腰を落ち着けて、淹れたての緑茶を味わう。東京ではビールばっかり飲んでいたから、緑茶の苦味とほのかなうま味が美味しく感じる。お茶ってこんなに美味しかったんだなぁ。
好美が自分の分のお茶を淹れて、僕の隣に座る。さっきまで笑顔だったのに、今は真剣な顔をしている。
「それで、どうだった? 何か分かった?」
「ああ、うん。調査は大変だったけど、由香にガラガラをあげた人には会えたよ。ホームレスらしき人に押し付けられたって言ってた」
「押し付けられたのを由香にあげたの?」
好美の顔が不快そうに歪む。
「見た感じ未成年の女の子だったし、仕方ないんじゃないかな」
「あなたは人に対して優しすぎるのよ。そんなんじゃあ、いつか悪い人に付け込まれるわ。借金だけは本当に注意してね」
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