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誰かが悲鳴の聞こえた方向を指差すが、そこにはうつ伏せになって畳に倒れている部員しか残っていなかった。
「野郎!どこに……」
恐怖に慄く部員達の背後から、まるで死神の如く桜生が迫る。
「ぐあっ……!」
「あぐっ!」
そこかしこで悲鳴が上がる。
「な……何が起きているんだ!」
確実に、一人一撃である。一撃で戦闘不能に追い込んでいる。そして、そのまま瞬時にして次のターゲットに移行しているのだ。
「眼が……眼がついて行かない……!」
時々、チラリチラリと桜生の姿が視界の陰を掠めるが、すぐにその所在が分からなくなる。
結局、僅か一分ほどの間に半数以上の部員が床に転がされる事態となった。
ここまで来ると、桜生としても『部員を盾にして姿を隠す』のが難しくなってくるが、逆に言えばそこまでする必要も無くなったと言える。それだけの戦力差なのだ。
「どうした……もう終わり……か?『生かして帰さない』んじゃなかったのか……」
桜生のシャツや頬には、所々赤い染みが着いている。部員達から浴びた返り血である。
足元には、血反吐を吐いて気を失っている部員達が累々と倒れている。
「うぅ……っ!」
部員達の足が竦む。
これは、相手が悪過ぎる。誰もがそう思った。
『これ』は我々が知っている格闘技ではない。どこか別の世界に住む『何か』だと。
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