桜生は楠源一郎と対峙する

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桜生は楠源一郎と対峙する

楠は、桜生の真意を計りかねていた。 コイツ……何を考えてやがる……? 言うまでもなく、五縄流は『殺人術』である。そこに『正々堂々』という概念は最初から一遍たりとも存在しない。例えどれだけ卑怯を極めようとも『勝てばよい』のだ。 そうであるとしたら、ワザワザ正面切って対峙する必要はない。それこそ闇討ちにすればいい話だ。それを何故、自分から姿を表すような真似を……? 二人の距離はまだ、一○メートル以上も離れている。『間合い』というには、まだ少々遠いと言えた。 『立会人』を名乗り出た山下は考えていた。 この野郎……まさか、オレを警戒していたのか……? もしかするとだ。 もしも『勘ぐりすぎ』で無いのだとしたら、自分が脇の下に抱えている『拳銃』の気配を嗅ぎ取った……とか? ターゲット以外の男が拳銃を抱えていると知って、それを警戒していたのだろうか……? 『拳銃の男』が、自分を発見するなり一方的に『撃ってくる』危険があると考え、じっとしていたと。 だが、どうも『そうでは無いらしい』と知り、逆に『申し合いの(てい)であれば、簡単には撃ってこない』と考え、あえて姿を表す選択をした……。
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