桜生は楠源一郎と対峙する

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 通常の『腕ひしぎ』は筋肉こそ酷く痛めはするが、骨が折れる処までは曲がらない。  しかし、五縄流の『それ』は、相手の腕を自分の脇に抱え込むようにして捻るのだ。そのため、肘関節は全くの逆方向目掛けて弓のように絞られる形となり……。  山下はそれを『猫』と例えたが。楠の腕に絡みつくその腕力は、とても猫と呼べるほど優しくは無かった。  それは熊のように強く、虎のように容赦がなく……。  グギ……ッ!  鉄の棒を捻るような、鈍い嫌な音がする。同時に。 「ぐぁぁぁぁっ!」  楠の絶叫が、道場の天井に反響した。
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