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「いや……『決着』は着いて無い……オレもコイツもまだ『生きて』いるし、コイツの口からも『参った』の声を聞いておらん……単に、コイツの腕が片方、使い物にならんくなっただけよ……」
「何だと……」
山下の足が竦む。
確かに。絶叫こそ上げるものの、楠は『参った』とは言っていないが……彼らの『決着』とは『そういうもの』なのか!
だがしかし、戦国の世ならばいざ知らず、現代の規範では『これ以上』を見逃す訳にも行かない。
「おいっ! 楠、『勝負あり』だ。もういい、もうギブアップしろ! これ以上ヤったら本気で殺されるぞ!」
しかし、楠は唇を噛み締め、必死でこの腕殺しに耐えている。
「くそっ……たれめ……誰が……誰が『参った』なんてするかよ……部員達が……大勢の後輩が大怪我させられたんだ……これしきの事で降参する訳にゃぁ、いかないんだよっ!」
「楠っ……!」
なるほど、『心は折れていない』のだ。もしもこの状況で『勝負あり』として桜生が腕を離してしまえば、間違いなく楠の反撃に遭うだろう。
そうならないように、徹底的に相手の『心を折る』。そういう戦いなのだ、と山下は理解した。
とは言うものの。
どうしても楠が『ギブアップ』と言わなければ、桜生はどうするだろうか。
何時までも腕固めをしていても埒が開かない。であれば、更なる破壊技を仕掛けてくるのは容易に想像が出来る。
「……させて、なるかよ!」
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