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「え……いやまぁ、それもありますが……何しろボクは彼の連絡先を知りません。まさか、あの体でSNSをやっているとも思えませんしね。それで、僭越には存じますが、伝言をお願い出来ないものかと」
少し恥ずかしげに、楠が小首を傾げる。
「ほう……何と伝えおけば?」
「はい。『近い内に必ずリベンジを果たしてみせる』と。『次こそは必ずや、そのニヤけた面を地面に叩きつけてくれる』と、お伝え頂ければ」
「ははは……『地面に叩きつける』か。それはまた、楽しみな事だな!」
片桐は闊達に笑った。
楠は『畳』ではなく『地面』と言った。
それは即ち、場所を選ばぬ果たし合いをも辞さぬ覚悟を意味していた。
「……先ほど、病院に出向いて後輩達に頭を下げて来ました。『不覚をとって仇を打ち漏らしたが、このまま黙って引き下るつもりはない。必ずや凱歌を挙げて見せる』と。それが、後輩との約束ですので」
そう言って、楠は大きく頭を下げた。
「どうもご馳走様でした。では、これにて失礼します。何しろ、栗田先生が道場にて待っておられますので」
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