第一章

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 「攻撃」がやみ、バサバサっと風圧を受ける。  おそるおそる、腕を下ろした。  見慣れない光景がそこにあった。  マキの肩に、黒光りするカラスが止まっている。  さっき、窓ガラスを叩いていた奴だ。 「カア」  カラスは口を大きく開けて、真正面からリョウを威嚇した。  マキは困ったような顔でリョウから目をそらし、肩に乗ったカラスを見た。「この人は私の……友達よ。敵じゃないわ」  まるで、人間を相手にしているような口調だ。  カラスのほうも、マキの言葉を理解したかのように首を傾げ、パチパチと瞬きをした。  羽根を広げてやさしく飛びたち、すぐ近くの木の枝に止まる。  そしてリョウに向かって、カッカッカッ、とバカにしたように鳴いた。  目の前の出来事を呆然と眺めていたリョウは、その声を聞いて、急に腹が立ってきた。  が、マキがスッと歩き出して店内へ入っていったので、急いでキャスケットを拾ってついていった。  マキは、何事もなかったように席に戻った。  カフェの中やテラス席にいた客たちも、カラスが騒いでいた時は、なんだなんだと注目し、立ち上がって見物したりしていたが、マキがあまりにも落ち着いているので、やがて元のようにおしゃべりや勉強に戻っていった。  リョウはキャスケットをかぶり直し、窓の外に見えるカラスを気にしながら、マキの向かいに座った。 「あのカラスって、紅子さんのところの?」 「そうよ」  何気ない質問と何気ない答え。  ……ぴったり同じ間を置いて、ふたりは顔を見合わせた。 「えっ」とマキ。 「あっ」とリョウ。
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