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「有田さん、どうぞ休憩に行ってください。私が入りますから」
さよみはそう声をかけながらバックヤードへ回り、ジャケットを脱いだ。
「よろしいんですか?」
有田が遠慮がちに尋ねる。
「もちろんです。氷碕さんともお話ししたいですし」
「そうですか。では、お言葉に甘えさせていただきます」
有田はさよみに頭をさげると、手早く身支度をして、出て行った。
入れ替わりに、制服のエプロンとキャスケットをつけたさよみが、レジの前に立った。その姿はどう見てもバイトの女子高生で、本社のマネージャーには見えない。
だが、ひとたび客が来ると、さよみはこれ以上ないくらいにテキパキと、カフェらしい適度な親切心のこもった接客をし、注文をさばいていった。
「さよみさん、すごく手際がいいですね」
波が引いたとき、リョウは思わずそう声をかけた。バイトを始めるときにはさよみと一緒にここへ来たのだが、彼女が実際に業務をしている姿を見るのは初めてだった。
「まあ、長いあいだ同じようなことをやってますので」
「ここって、そんなに昔からあるんですか」
「ああ、いえ、このお店でということではなくて。私、篠目家の使用人だったんですよ。お話ししてませんでしたっけ?」
篠目、しのめ……と、リョウはしばらくの間、記憶を探った。
「えっ、もしかして篠目って……篠目あずまくん?」
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