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「あの、なんて言うんですか、〈狗番〉が通信に使ったりする……なんか、マキさんの護衛みたいに付いているらしいんです」
「ああ、〈狗番〉のカラスですか?」
そう返事をするさよみの様子が、急にふてぶてしい感じになったので、ちょっと驚いた。
「気にしなくていいですよ。〈狗番〉はまだあんなものを使役してるんですねえ」
その口調と表情には既視感があった。
そう、篠目あずまだ。〈導き手〉と〈手下〉は、似てくるものなのだろうか。
「六ツ森稲荷で訓練してるって、師匠が言ってました。そのとき、カラスは〈狗〉を避けるとも聞いたので、さっき攻撃されてびっくりしちゃって」
「エッ、攻撃されたんですか?」
今度はさよみが驚いた。
「はい。それって珍しいことなんですか」
「聞いたことないですね。アレらにはそんな……」
と、何かに気づいたように息を飲む。
それを見て、リョウは察してしまった。
「つまり、ぼくが〈狗〉としてお話にならないほど弱い……ってことが、カラスにもわかっちゃった……から……」
最後は消え入りそうな声で、激しく落ち込むのを、さよみは慌てて盛り立て始めた。
「でっ、でも! 氷碕さんにはほら、あのすごい白い光があるじゃないですか! あれを使いこなせるようになれば最強だって頭領も言ってましたし!」
「そんなこと言ってたんですか」
「そうですよ。だから焦らずにがんばりましょうっ!」
焦ってはいないのだが。
「とりあえず、今夜も特訓がんばります……」
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