第一章

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 勘違いか!  だが、歯ぎしりしても遅い。  集中力は切れ、自分が動いた音で周りの音はかき消されてしまった。  着地と同時に磁気の〈盾〉を張る。しかし、これは長くは保たない。  木立を見上げる。どこだ。  そのときやっと、磁気ではなく「音」に反応してしまったことに気づいた。  が、自己嫌悪に陥っている場合ではない。  動くべきか、じっとしているべきか。  〈盾〉が消えたとき、真後ろに鋭い磁気が落ちるのを感じた。  反射的に駆け出す。  どこだ。  風は激しさを増す一方。  磁気は雷のように、走る彼の周囲に落ち続ける。  逃げてばかりではダメだ。反撃に転じなくては。  だが、どうやって?  ──木に登ったほうがいいんだ!  上から落とされる磁気の入射角が急すぎるから、出どころを特定できないのだ。絶えず動いているから、なおさらである。  自分も木の上に行けば、磁気の発射源の方向がわかりやすくなる。  敵に近づいてしまうことを恐れるあまり、気づくことができなかった。  すぐに手近の木に取り付いて、幹を垂直に駆け上がる。  どの方向から攻撃が……と構えていたが、次の磁気は、予想外の方向──下から飛んできた。
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