第一章

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 自分が木に登るのと全く同時に、敵は木の上から地面に降りたのだ。  つまり、双方の位置が入れ替わっただけ。  それどころか、強風で激しく木が揺れるので、思うように身動きがとれない。あきらかに、こちらの方が不利だった。  心の中で自分を罵りながら、不器用に木を渡っていく。  磁気は、今度は下から急角度で飛んでくる。   ビョオッ  ひときわ激しく吹いた風にあおられ、伸ばした手が枝をつかみそこなった。  ざ、ざ、ざ、と無数の小枝にこすられながら落下していく。  着地したところは予想以上の急斜面だった。というか、ほとんど崖だ。 「!!」  斜面はむき出しの岩石で、やたらにゴツゴツする。  磁気を放ってみたがうまくいかず、結局止まることができたのは、斜面が終わって平らになったところだった。  立ち上がって姿勢を低くし、周囲を警戒する。  そこは四方を岩の崖に囲まれた、だだっ広い運動場のような場所だった。  そっと空を見上げると、黒い雲が恐ろしい速さで流れていく。  転げ落ちて来た崖の高さは、20メートルはあるだろうか。  あちこち擦りむいたようで、風が当たるたびに手足がヒリヒリする。
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