第一章

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 両手のひらから磁気を出し、蛇のような細長い形に整える。最初はすぐに拡散してしまったが、だんだん保っていられるようになってきた。  ──扉がノックされ、反射的に「はい」と返事した。  そのとたん、〈飯綱〉が手のあいだをすり抜け、会議室に入ってきたさよみに向かって床を走った。 「あっ!」  リョウは声をあげたが、さよみは顔色ひとつ変えずに〈飯綱〉を捕まえ、宙に散らした。 「ごっ、ごめんなさい……」  立ち上がって謝るリョウに、さよみは笑顔を向けた。 「作るのは簡単ですけど、制御はコツがいるんですよ。おっしゃっていただければ、教えて差し上げましたのに」 「そうなんですか……」 「〈飯綱〉が必要ですの?」 「はい。マキさんにつけようかなって」 「えっ」 「マキさんの居場所をいつもわかっていたいなと思って。自分が作った〈飯綱〉は、どこにあるかがわかるんでしょう?」 「あの、氷碕さん」 「はい」 「ストーカーって、ご存知ですか?」  さよみが真顔で尋ねた。リョウは一瞬きょとんとしたが、すぐに正義感をあらわにした顔つきになった。
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