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両手のひらから磁気を出し、蛇のような細長い形に整える。最初はすぐに拡散してしまったが、だんだん保っていられるようになってきた。
──扉がノックされ、反射的に「はい」と返事した。
そのとたん、〈飯綱〉が手のあいだをすり抜け、会議室に入ってきたさよみに向かって床を走った。
「あっ!」
リョウは声をあげたが、さよみは顔色ひとつ変えずに〈飯綱〉を捕まえ、宙に散らした。
「ごっ、ごめんなさい……」
立ち上がって謝るリョウに、さよみは笑顔を向けた。
「作るのは簡単ですけど、制御はコツがいるんですよ。おっしゃっていただければ、教えて差し上げましたのに」
「そうなんですか……」
「〈飯綱〉が必要ですの?」
「はい。マキさんにつけようかなって」
「えっ」
「マキさんの居場所をいつもわかっていたいなと思って。自分が作った〈飯綱〉は、どこにあるかがわかるんでしょう?」
「あの、氷碕さん」
「はい」
「ストーカーって、ご存知ですか?」
さよみが真顔で尋ねた。リョウは一瞬きょとんとしたが、すぐに正義感をあらわにした顔つきになった。
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