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「知ってますよ。うち、テレビはないけど新聞は毎日読んでます。ひどいですよね。なんでそんなことをするんだろう……でも、どうして急にそんな話を?」
リョウが無邪気に小首を傾げるのを見て、さよみはふっと息を吐いた。
「いえ、なんでもありません。……あの、〈飯綱〉ですけど、マキさんにつけるのはお勧めしません」
「えー、なんでですか?」
「〈飯綱〉は〈狗〉の生体磁気から作るもので、あくまで対〈狗〉用です。普通の人間に使うと、つけられた人間は悪夢にうなされたり、気分がひどく落ち込んだりすることがあります」
「そうなんですか」
リョウは愕然とした。さよみはそんな彼に、どうぞお掛けくださいと促し、自分も向かい側に座った。
ちょうどそのときノックがあって、さっきのへら男がお茶を持って入って来た。彼が湯呑みを置いて出て行くと、さよみは気分を切り替えるように背筋を伸ばし、書類を挟んだクリアファイルを胸の前に立てた。
「ご要望の件、調べておきました」
と言いながら、クリアファイルからホチキス留めしたA4の書類を取り出し、リョウの前に置く。
「まず、通信制高校ですけど、いくつか見つくろって、ホームページをプリントアウトしました。こちらが……」
と、短い説明を添えながら、同じようにホチキス留めした書類を並べていった。全部で4つある。
リョウはそれらを神妙に眺めた。
「ありがとうございます。じっくり考えたいので、持って帰ってもいいですか」
「もちろんです。ゆっくりご検討なさってください」
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