第一章

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「知ってますよ。うち、テレビはないけど新聞は毎日読んでます。ひどいですよね。なんでそんなことをするんだろう……でも、どうして急にそんな話を?」  リョウが無邪気に小首を傾げるのを見て、さよみはふっと息を吐いた。 「いえ、なんでもありません。……あの、〈飯綱〉ですけど、マキさんにつけるのはお勧めしません」 「えー、なんでですか?」 「〈飯綱〉は〈(きつね)〉の生体磁気から作るもので、あくまで対〈(きつね)〉用です。普通の人間に使うと、つけられた人間は悪夢にうなされたり、気分がひどく落ち込んだりすることがあります」 「そうなんですか」  リョウは愕然とした。さよみはそんな彼に、どうぞお掛けくださいと促し、自分も向かい側に座った。  ちょうどそのときノックがあって、さっきのへら()がお茶を持って入って来た。彼が湯呑みを置いて出て行くと、さよみは気分を切り替えるように背筋を伸ばし、書類を挟んだクリアファイルを胸の前に立てた。 「ご要望の件、調べておきました」  と言いながら、クリアファイルからホチキス留めしたA4の書類を取り出し、リョウの前に置く。 「まず、通信制高校ですけど、いくつか見つくろって、ホームページをプリントアウトしました。こちらが……」  と、短い説明を添えながら、同じようにホチキス留めした書類を並べていった。全部で4つある。  リョウはそれらを神妙に眺めた。 「ありがとうございます。じっくり考えたいので、持って帰ってもいいですか」 「もちろんです。ゆっくりご検討なさってください」
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