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同じ頃、
ニューヨーク、21:00。
少年の店で買い求めた、毛糸の靴下を履いた若い女優が、ロケの待ち時間の間、足元を冷やさない様にと、それで体温の放出を防いでいる。
ロンドン、1:00。
同じく、大判のストールを肩からまとった女流作家が机に向かい、迫りくる締切に追われながら、徹夜で物語のアイデアを練ろうとしている。
ニューデリー、7:00。
同じく、ポシェットを肩からたすき掛けし、その上に大きなバックパックを背負ったスペイン人のバックパッカーが、朝早い電車に、飛び乗って行った。
北京、9:00。
同じく、叔父さんからもらった、その幾何学模様のペンケースを机の上に載せ、学生がこれから、試験に臨もうとしている。
東京、10:00。
同じく、おばあちゃんのお土産の、耳まですっぽり隠れるニット帽を被せられ、2才の子が今、母親が押すベビーカーで、陽光の中を出かけていった。
少年の意識はグルッと世界を一周し終え、先程、その大きな翼を静かに閉じていった。もはや深い眠りにつき、今や夢の真っ只中にいる。たとえ、どんなに貧しい暮らしに身を置こうが、少年の心は、いつ何時でも自由である。飛び出したいときには、すぐに大空高く羽ばたいていける。なぜならここは、標高4000M、他のどんな場所よりも、空に近いからである。
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