4.和風のお菓子と嫌な雑談

10/10
112人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
  「でも、あのマズい乳でお菓子なんて本当に作れるの?」 「まあ見てなって。失敗したらそんときゃそん時だ」 「えー、僕あんなの飲むくらいなら酒の方がいいよー」  そう言いつつぐだぐだと机に頬をくっつけるブラックに、俺は呆れて深い溜息を吐いた。本当コイツ好き嫌い多いなー。  でもそうだな、見つからない場合もあるし……なによりヤギの乳って確か独特のクセがあって、合わない人は合わないって聞くよな。  期待させるのもなんだし……あんまり言わない方が良いかも。 「てか、お前わりと酒好きだったんだな」 「ツカサ君と一緒にいるから、あまり飲まないようにしてるだけだよ。エールとかは良いけど、酒は酔うでしょ。飲ませたらツカサ君酒乱になりそうだし」 「ばっ……誰が!」  失礼な、俺は酒乱になったりしないぞ。  酒を飲んだと言っても、ちょっとだけど。甘酒を飲んだり父さんの酎ハイを味見したり、リタリアさんの屋敷で高級なワインを一杯飲んだくらいだけどな。  でも、その時は別に何もなかったんだ。足だってふらつかなかったんだぞ。  それなのに酒乱っぽいとは失礼にもほどがある。  泥酔して号泣してたオッサンに言われたくない。  ロクを抱きかかえて立ち上がる俺に、ブラックは机に突っ伏したままで俺を疑わしげに見上げてくる。くうっ、ムカツク。 「本当に酔わないー?」 「少なくともアンタみたいに泥酔したりしない!」 「じゃあ、明日お酒買って来てよ。ツカサ君が好きな奴で良いからさ。そんで勝負しよう。負けた方がいう事聞くって約束で」 「な……」 「負けるの、怖い?」 「はーぁ? 随分余裕じゃねーか。良いぜ、酒豪勝負やったろうじゃんか。ほえ面かいても知らねーぞオッサン!」 「そっちこそ、泥酔しないようにね」  にっこりと笑うブラック。  その笑顔を見て、嵌められたと気付いたが……最早勝負は流せそうになかった。  チクショウ、このオッサンのこういう所、本当嫌い! →  
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!