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「でも、あのマズい乳でお菓子なんて本当に作れるの?」
「まあ見てなって。失敗したらそんときゃそん時だ」
「えー、僕あんなの飲むくらいなら酒の方がいいよー」
そう言いつつぐだぐだと机に頬をくっつけるブラックに、俺は呆れて深い溜息を吐いた。本当コイツ好き嫌い多いなー。
でもそうだな、見つからない場合もあるし……なによりヤギの乳って確か独特のクセがあって、合わない人は合わないって聞くよな。
期待させるのもなんだし……あんまり言わない方が良いかも。
「てか、お前わりと酒好きだったんだな」
「ツカサ君と一緒にいるから、あまり飲まないようにしてるだけだよ。エールとかは良いけど、酒は酔うでしょ。飲ませたらツカサ君酒乱になりそうだし」
「ばっ……誰が!」
失礼な、俺は酒乱になったりしないぞ。
酒を飲んだと言っても、ちょっとだけど。甘酒を飲んだり父さんの酎ハイを味見したり、リタリアさんの屋敷で高級なワインを一杯飲んだくらいだけどな。
でも、その時は別に何もなかったんだ。足だってふらつかなかったんだぞ。
それなのに酒乱っぽいとは失礼にもほどがある。
泥酔して号泣してたオッサンに言われたくない。
ロクを抱きかかえて立ち上がる俺に、ブラックは机に突っ伏したままで俺を疑わしげに見上げてくる。くうっ、ムカツク。
「本当に酔わないー?」
「少なくともアンタみたいに泥酔したりしない!」
「じゃあ、明日お酒買って来てよ。ツカサ君が好きな奴で良いからさ。そんで勝負しよう。負けた方がいう事聞くって約束で」
「な……」
「負けるの、怖い?」
「はーぁ? 随分余裕じゃねーか。良いぜ、酒豪勝負やったろうじゃんか。ほえ面かいても知らねーぞオッサン!」
「そっちこそ、泥酔しないようにね」
にっこりと笑うブラック。
その笑顔を見て、嵌められたと気付いたが……最早勝負は流せそうになかった。
チクショウ、このオッサンのこういう所、本当嫌い!
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