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「…………この世界の料理がさほど発展してない理由が分かった気がする……」
あれだ。多分、俺の世界では「動物」や「植物」で済んでた物が「モンスター」になってる事で、料理のハードルが上がってるんだ。
食材を採取するのも命がけ、機械もないしモンスターに立ち向かえる人も決して多くは無い。飼い慣らすのだってこの世界じゃ難しい。だって相手は人に懐く事が珍しいって生き物だもんな。
もしモンスターが人に懐きやすいのなら、俺とロクがそう言う契約をせずに一緒にいるのも普通の事だと思われていただろう。
守護獣なんて言う言葉も無かったはずだ。
ほんっと、この世界ってのは面倒だよなあ。
まあでもその不便さが昔のRPGみたいだし、色々やりくりするのも楽しいから、俺としてはわりと好きな部分も有るけどな。
……理不尽な事にも順応し始めてる自分がいるのが悲しいが。
そんな事を思いつつ、俺は肩に乗っているロクをみやった。
「ロク、まだ眠くないか。大丈夫?」
「キュ~」
今朝は珍しくロクが起きていたので、昨日言われた通りにサリクさんの治療院にも行く事にしている。心配はないと言われてても、やっぱ気になるしな。
貰ったバロ乳をロクと分けてあって飲みながら、俺達はまた温泉街へと向かった。いや、この量じゃバター作っても微々たる量だからね、味見をしておこうって訳だよ。うん。
「微かにチーズっぽい味がしないでもないけど、搾りたてだからか別に獣臭い感じはしないな。どのくらいの時間が経つとダメになるんだろ」
普通の牛乳も常温で置いてれば気持ち悪い飲み味になるが、変化が分からんな。ちょっとだけ残しつつ飲み比べてみるか。
ロクには美味しい間に沢山飲ませておくけどな!
「バロ乳美味しいか?」
「キュキュ~!」
ライクネスでロクを預かってくれたナイスバディのお姉さん……確か、ターニャさんと言ったかな。あの人が言うには、ロクには色々食べさせてあげると良いって話だったけど……やっぱ毒とかより、美味しい物食べさせてやりたいよな。
ロクには沢山助けて貰ってるし、なにより俺にとっては大事な相棒だしさ。
「眠たくなったらいつでも言うんだぞ」
「キュー」
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