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頭を撫でてやって、俺は街を散策しながらサリクさんの診療所へ向かった。
やっぱ観光客も多いなー。観光案内本を確認してみると、島には公衆浴場の他にも色々と名所が有るらしい。海岸やら砂浜やらもあってまさにリゾートだ。確かにこれは観光したくなるわ。
うーん、ブラックの足が治ってたら一緒に行ったんだけどなあ。
……いや、別に、一緒に居たいとかじゃないぞ。
俺一人が楽しんだら悪いじゃん。今までずっと一緒に居たんだし、わりと迷惑かけたりもしてるから、そう言うのはアレかなと思って……。
「っていうか……ブラックも今はヒマなんだよな」
俺はロクと散策を楽しんでるけど、ブラックはいまベッドの上だ。
酒のみ勝負がやりたいって言ったのも、退屈からだったんだろうか。だとしたらちょっと可哀想だな。もう少し優しくしてやった方が良かったかな。
「せめて酒はちょっとフンパツしてやろうかなあ……」
あいつオッサンだからきっと酒は大好きだろうし、煽てて飲ませりゃ勝負なんて関係なくなるだろう。酒だけって言ってたけど、つまみとか買おうかな。
父さん何食ってたっけ。するめとか? この世界にするめあんのかな?
「シャーッ!」
「うわっ、なに、ロクどうした?」
色々と考えてたらいきなりロクが威嚇したので何事かと思ったら、俺の周囲にはいつの間にか数人の男が集まっていた。
おう。このパターンは。
「は、ははは、キミえらく珍しいモンスター飼ってるね……」
「へっ、だ、ダハくらいなんだい! なあ可愛い子ちゃん、俺と一緒に浴場めぐりしないかい?」
「島の事は地元民の俺が教える! さ、こんな奴らは放っておいて……」
ええ……お兄さん達いつのまに俺を取り囲んでたんですか。考えごとしてたから全然気付かなかったんすけど。
ロク、俺を守るために威嚇してくれたんだね、ありがとう。
「昨日はお父さんがいてナンパ出来なかったけど、今日はずっと一人だけだったし行けるかと思って」
「お前っ、俺が先に目ェつけてたんだぞ!」
「それなら僕はこの子が港に降りた時から……」
「なにを」
「私だって」
あの、お兄さんがた。俺を放っておいて勝手に盛り上がらないで。
ていうか島に降りた直後から見てたってそれストーカーじゃないんすか。
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