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中にはゴンドラのようなでっかい船や豪華な大型船もあったりして、バカンスに来る人達も様々だってのが見て取れる。
これだけ客層がバラけてるなら、堅苦しくなくやれそうだな。
貴族の集まりみたいなのはもうこりごりだ。
「ツカサ君、上陸したら宿で……」
「荷物を降ろしてさっさと治療院いこうなー、ブラック!」
「ええ……」
「怪我人が四の五の言わない」
睨み付けると、ブラックは嫌そうな顔をして顎を引く。
お前の為なんだから、嫌がってんじゃねーぞこら。
大体病院嫌がるなんて子供のする事なんだからな、俺より年上のくせしてそんな言動は許さんぞ。まったく。
「はっはっは! お客さん方本当に仲が良いなあ。うーん、俺も久しぶりにかかあと島に渡ってみるかなあ」
「あー……あははー……」
良い話だ、奥さん大事にしてあげて下さいね。とは思うが、俺達を見てそんな事を思わないで下さい頼むから。そんな事を言うとこの中年調子に乗るから。
本当調子に乗ってウザいから。
「へへ、えへへへ……僕達夫婦に見えるんだって、ツカサ君!」
「お前恋人まだにもなってないのによくそんな事言えるなオイ」
ほらすぐコイツ調子に乗るー。
もう肩に担いで歩くのやめてやろうかな。
……とは思うが、そこまで非情にはなれない。
ああ本当俺ってお人好しだよなあ。慈愛溢れすぎて愛の神様にでもなりそうだぜ。なんて、ありえない事を冗談めかして思いつつ、俺は石造りの岸壁を見て溜息を吐いたのだった。
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