2.医者って小奇麗な老紳士だと妙に信用できるよね

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  「ねえツカサ君……やっぱりやめない? ほら、治療費高そうだしさ」 「何言ってんの、アンタの怪我の治療費だってシアンさん持ちなんだぞ。そこまでしてくれてるのに、治療しないって方が失礼だろうが」 「ツカサ君時々妙に大人みたいなこと言うよね……」 「アンタが子供みたいにだだこねるからでしょうが! ほらほらさっさと入る! こう言うのは厚意を無にするのが一番失礼なんだからな!」  俺の物言いは婆ちゃんゆずりだ、文句が有るなら婆ちゃんに言ってくれ。  ブラックをずりずり引っ張って治療院のドアを開ける。  そこには小さな受付があり、木製の質素な長椅子が並んでいた。待っている患者さんは少ないけど、これは回転率がいいからなのかしら。  不思議に思いつつ、俺はブラックを座らせて受付に向かった。 「すいません、サリクさんに診察をお願いしたいんですが……」 「あら、丁度でしたね。サリクは今往診から帰ってきたところですの。少しお待ち頂ければすぐ診察できますわ」  そう言いながら笑ってくれたのは、髪を白い布で覆った看護婦さん風の美人なお姉さん。一重の目がいつも微笑んでいる顔を作っていて、オリエンタルな魅力だ。藍色の髪色も綺麗だし、当然美女だし最高か。うーん、二重もいいけど一重もね! 「ええと、診るのはあちらのお父様でよろしいですか?」 「あっいや……あいつは冒険の仲間です……」 「あらやだっ、す、すみません早とちりで……では、簡単にで結構ですので、この紙にお名前と症状を書いて下さい」  差し出された紙には、本当に簡単な項目しかない。これだけで分かるのかな。  不思議に思ったが、ブラックの名前と怪我の事を書いて紙を返す。 「あら。お名前だけですか。家名などは?」  家名……苗字ってことかな。  そう言えば俺、ブラックの苗字知らないな。今まで気にした事もなかったけど、考えてみればアイツ、苗字すら教えてくれてないんだ。  ……そりゃ、言いたくない事は言うなと言ったけどさ。でも、苗字すら知らないってどうなんだろう……。  俺、そんなに話しちゃダメな奴だと思われてるのかな。  
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