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5.はじめての飲料と守護獣の闇
「すまないねえ、今日はフランベーヌちゃんもお乳の出が悪いみたいで」
「いえ、大丈夫です! それよりありがとうございます、変な頼み事なのに」
「良いのよ、バロメッツは余った母乳をそこらじゅうにまき散らして面倒だから……寧ろ貰ってくれてありがたいわ。お乳はそのままにしておくと臭いが出てしまうから、早めに飲んでね。明日にはもっとお乳が出ると思うわ」
「はい、じゃあ明日来ます! ありがとうございました!」
ここはマダムが切り盛りする、高級料理店……の裏。
何匹かのバロメッツがガァガァと鳴く小さな牧場である。
ヤギなのにアヒルみたいな泣き声とは驚いたが、まあ、長く鳴いてくれればヤギと一緒の鳴き声に聞こえなくもないので気にしないでおく。
俺はそんな店の牧場で、マダムに取り入ってバロメッツから中瓶一杯分のヤギ乳……バロ乳って言うのかな。とにかく乳を貰っていた。
いやー、持ってて良かったハチミツトリートメント。ここでも女性へのアピール度は絶大で、一個手渡すだけで楽々ツテを作る事が出来た。
多分ハチミツでトリートメントする文化は有るんじゃないかな~とは思ってたんだけど、やっぱり俺の予想は正解だったようで、蜂蜜は食べる以外にも高級なトリートメントとしてお貴族様には有名らしい。
高級な理由は、モンスターからしか取れないからだろうな。
とにかくアレ一つでバロ乳を無料で分けて貰えるようになったのはデカい。
バロメッツの事についてもマダムから色々教えて貰ったし、今日は大収穫だ。
「うーむ、しかしバターが流通し辛い物だったとはなあ……」
結論から言うと、この世界にもバターはあった。
……んだけども、バロ乳のバターは流通させるのがとんでもなく難しいらしく、その為バロメッツを飼っている店じゃないと使えないんだそうな。
マダムが言っていた事を簡潔に言うと、こうだ。
バロメッツは高価。バターは冷やして置かないとすぐ溶ける。そもそも、バターを作れるだけの乳を出して貰うには懐いて貰わないとムリ。
ただし、バロメッツはかなり人に懐きにくい。
多頭飼いも嫉妬して乳出さなくなるからムリ。
ってなワケで、バターは全く流通出来ないんだとか。
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