隣の席の一五沢さん

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 隣の席の一五沢さんは、一週間前に僕がこの高校に転校してきてから、ずっと欠席扱いをされていた。  転校初日は、クラス全員で女の子を無視するさまに、いじめだ、と息を飲んだ。だが、生徒だけでなく、担任はじめ各教科の教師たちまでが彼女をいないものと扱っていることに、だんだん違和感を覚えはじめた。  つい気になってちらちらと隣を盗み見るうち、さすがにおかしいぞと思いはじめた。なぜなら、僕が登校してから下校するまで、彼女は同じ姿勢で身じろぎもせずにずっと座っているのだ。まるで制止画像のように。  そこではじめて、彼女は幽霊のようなもので、僕にしか見えていないのだ、と気づいたのだった。  そうなると、もう隣の席が気になってしょうがない。  一五沢さんは、きちんとそろえた膝に両手を置き、首を落とすようにしてうつむいている。みんなと変わらない肉体を持った女の子にしか見えなかった。しかも、華奢で可愛い女の子。肩あたりで切りそろえられた髪が顔を隠しているのだが、僕の中では可憐な美少女として脳内再現されていた。
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