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    小学校四年生の頃、湊は同じクラスの男子にリボンのついたスカートを馬鹿にされ汚されカッターで切られた。似合わないとか気持ち悪いとか、たくさんの言葉で湊は傷つけられた。その男子は、きっと湊のことを好きだった。多分、湊も。   男子は、先に成長期に入ってしまった湊が、そこらの男子よりも端正に成長していく過程を後ろの席から眺めていて、置いてきぼりの恐怖を必要以上に感じてしまったのかもしれない。   それからの湊は、男子と変わらない格好しかしなくなってしまった。フリルやリボンやレースだけじゃない、自分を彩る全てを捨てた。   確かに湊は、順調に端正にカッコよく成長していき、バッサリ切ってしまった短い髪や、すらりと伸びた手足で纏うすっきりしたパンツスタイルがとても似合う子になったけど。……悔しいが僕も一度も身長で勝てたことはないけど。   確かに、湊の愛するロリータの中には湊には似合わないものもあるけど、そんなのは他の物事にだって共通して言えることだろう。合うものと合わないものなんて。そもそもあいつ以外誰も湊をけなしてない。   だから、一切を捨ててしまうなんてことはしなくてもいいんだ。   叶うなら、僕が湊に。   「僕が湊に着せたいスカートやワンピースがいっぱいあるんだよ。リボンだってフリルだってレースだって、湊に一番似合うものを作るんだ。早く、湊が自分を否定しなくなるように。湊が、自分は可愛い女の子だって認めてくれるように」   「宗十郎……」   「自力が難しいなら、僕が有名になって湊を披露して自慢して可愛がれば、そうなってくれる?」   「な、んで……」   「まあ、有名になれば、この宗十郎っていう古くて堅苦しい名前も箔が付いたように錯覚出来るし、それも目論んでるんだけどね」 顔色を青くも赤くも変化させる湊は、答えの出ない感情をもて余すみたいに、なんとも珍妙な表情をしている。そんなところも、大切だと、僕の心が満ちて満ちて破裂しそうだ。 そうやって、解らなくて、もて余して、混乱して。知っていってよ。   僕の宝ものな可愛い女の子は、そうしていつか、今以上に目が離せなくなるほどに、綺麗に咲き誇ろんでいく。         ――END――
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