Cat

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 気付いた健太が私の名前を呼んだ。私は一瞬だけ健太を見てから、今度は康介に飛びかかった。その瞬間、私はお腹に激しい衝撃を感じた。そのまま私の身体は宙を舞う。私は康介に蹴り飛ばされたのだということを、すぐに認識した。上手く呼吸ができず、ひどく息苦しい。私はそのまま地面に叩きつけられたが、起き上がることもままならない。すぐに健太が駆け寄ってきて、私に覆いかぶさる。そんな健太を、修と康介が上から蹴りつける。何とか奴らを引っ掻いてやりたいが、相変わらず身体は動かないままだ。おまけに、蹴られたお腹が激しく痛む。私はだんだん意識が朦朧とし、そのまま気を失った。  気がつくと、辺りがひどく消毒液臭い。視界がぼんやりしてはっきりとは見えないが、どうやら私は病院に運ばれたらしい。そして、私の耳に医師らしき男の声が聞こえてくる。 「内臓のいくつかが破裂しています。もう、手の施しようがありません」 「そんなの嫌だ!! 先生、何とかノルを助けてください」  私の隣で、健太が泣きながら大きな声を上げる。何とか健太の声に応えようと声を上げようとするが、苦しくて上手くいかない。医師の言うとおり、私はこのまま死んでしまうのだろう。三年という短い時間だったが、健太に大切に可愛がられて、とても幸せな猫生だったと思う。だけど、修と康介を徹底的にやっつけてやれなかったのが、何よりも心残りだ。  私は体がフワリと浮くような感覚がした。たった今、自分が死んでしまったのだということが、私にはわかった。私の体と、それに(すが)り付いて泣く健太の姿を、私は中空から見おろす。本当ならば、このまま私は天に昇るべきなのだろうけれど、やはり修と康介をこのままにしてあの世に行くことはできない。     
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