Cat

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 夜、健太は私の亡骸を傍に置いて、泣きながら眠りに就いた。完全に眠りに就いたのを確認してから、私は健太に近寄り、 「悪いけど、ちょっとだけ体を借りるわね」  と断りを入れてから、その体に乗り移った。いざ乗り移ってみると、ずいぶん不思議な感じがする。猫の体と人間の体では、作りがあまりにも違うのだから、それも仕方がない。私は動きを確認するためにベットから這い出した。癖でついつい四足歩行をしそうになるが、人間は二本足で立つのだということを思い出し、ゆっくりと立ち上がってみる。だけど、バランスを取るのがなかなか難しい。私は何度か尻餅をつきながら、ようやく立ち上がった。立ち上がるだけでこんなに大変なのに、果たして二本足で歩くことなどできるのだろうかと、私は不安になる。だけど、歩くことができなければ、修と康介に復讐してやることなど出来はしない。私はゆっくりと右足を前に出し、続いて左足を前に出した。それを交互に繰り返していると、やがて体が慣れてきた。一度バランスを覚えてしまうと、歩くことはたいして難しくなかった。私は翌朝に向けて、眠りに就くことにした。     
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