Cat

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 翌朝、健太はいつもと同じ時間に家を出る。私はこっそりと家を抜け出し、健太に見つからないよう、物陰に身を隠しながら後を追った。健太が中学校という所に行っているということは知っているが、私はそれがどこにあるのか知らない。だけど、健太の身に何かが起こっているとすれば、きっと中学校でのことだろうと私は思っている。問題を解決するためには、どうしても中学校に行ってみなければならない。  十分ほど歩くと、ずいぶん大きな建物が見えてきた。辺りには健太と同じくらいの年齢の人間が沢山集まっている。目の前の大きな建物が中学校なのだということはわかったけれど、あまりにも人が多すぎて、これ以上身を隠しながら近づくことはできそうにない。私は諦めて、一旦家に戻り、時間を置いてからもう一度行ってみることにした。  帰り道、家までもう少しというところで、向こうから雑種の野良猫兄弟キジとトラが歩いてくるのが見えた。彼らは私の取り巻きの中でも熱烈な部類で、おそらく私の言う事ならば何でもきく。そんなキジとトラは、私の姿に気づくと、嬉しそうな顔をして、一目散に駆け寄ってくる。 「ノル、こんなところで会うとは奇遇だね。もはやこれは運命の出会いかもしれない」  いつも気障(きざ)なキジが、訳のわからない挨拶をしてくる。いつもなら完全に無視してやるところだけれど、こいつらならば中学校のこともよく知っているかもしれないと思った私は、少しだけ話をしてやることにした。 「まあ、運命の出会いでも何でもないから、意味のわからないことを言わないで。それよりも、ちょっとあんた達に訊きたいことがあるのよ」 「何だい?」     
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