Cat

7/14
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「お安いご用さ。昼過ぎに家に迎えに行くから、いつでも外に出られる準備をしておいてくれるかい?」 「もちろんよ」  私はそう答えてから、野良猫兄弟と別れて家に戻った。昼過ぎまで、まだずいぶん時間がある。その間に一眠りしておこうと、私は押入れに潜り込み、布団の上で丸くなった。  昼過ぎ、約束どおりに野良猫兄弟が迎えにやって来た。私は家を出て、野良猫兄弟の後を追っていく。野良猫兄弟は塀の上だとか屋根の上だとかを次々に渡りながら中学校に向かっていく。それが中学校への最短の道のりなのかもしれないが、レディの私を伴って歩くにはいささかセンスがなさ過ぎる。とはいえ、端から野良猫兄弟にセンスなどあるはずもないし、そんなものを求めてしまう私が悪いのかもしれないと、少しだけ反省した。  やがてまた、あの大きな建物が私の視界に飛び込んでくる。建物の前の広い庭には、朝と同じように多くの人間がいて、走り回ったりボールを蹴ったりしている。このままでは、朝とそれほど状況は変わらない。 「ねえ、あんた達、どこから中学校の中に入るつもりなのよ?」  私は前をゆく野良猫兄弟に尋ねた。 「心配しないで。とっておきの抜け穴があるから」  トラは振り返ることもなく答える。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!