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私は適当に遇いながら、野良猫兄弟に続いて切れ間をすり抜け、中学校の敷地に入る。私達は建物の壁に沿って、身を低くしながら、表の広い庭の方へと回る。そして、植え込みの陰に身を潜め、周囲の様子を窺ってみる。そこでは、外から見たとおり、中学生が走り回ったり、ボールを蹴ったりしながら遊んでいる。私はそんな中から、健太の姿を探す。だけど、なかなか健太は見つからない。もしかしたらここにはいないのかもしれないと諦めかけたその時、建物から出てくる健太の姿が目に写った。私はすぐにでも駆け寄って行きたい衝動を抑えながら、様子を窺い続ける。すると、健太の後を追って、二人の男が出てきた。その男達を見た瞬間、野良猫兄弟が突然震えだした。
「どうしたの?」
「あれは居酒屋の修と雑貨屋の康介だ!」
キジが思わず大声を上げる。
「修と康介?」
「ああ。この近所じゃ有名な悪ガキさ。僕たちもあいつらにはずいぶん酷い目にあわされてきた」
「たとえば?」
「道を歩いてるだけで追い回されたり、石を投げつけられたり、いろいろさ。最近、黒猫のゴンを見なくなっただろう?」
「たしかに、見なくなったわね。以前は毎日のように家に顔を出してたんだけど」
「ゴンはあいつらに殺されたのさ。黒猫は縁起が悪いとか因縁をつけられてさ。本当に最低な奴らさ」
キジは吐き捨てるように言った。
「なんで健太がそんな奴らと一緒に……」
私がそう呟いた瞬間、修が健太の背中を思い切り蹴りつけた。その衝撃でよろけた健太を、今度は康介が小突き始める。健太は明らかに嫌がっていて、逃げ回っているが、二人で執拗に追い回し、小突いたり蹴ったりし続ける。周りの人間は見て見ぬふりで、誰も健太を助けようとはしない。
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