儚い恋

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至極当然な話、話したこともない相手と、どう恋愛しろと? ある人は言う。そんなの、こっちから話しかければいいんだよ。その会話できっかけをつくって…… そいつは陽キャだ。けれど、僕は人見知りなんだ。少人数の友達はいるにしても、時間をかけてつくった。それも趣味や相性などの、肌が合う人じゃなきゃ僕は駄目だった。肝心なのは、その友達の中に女性がいればの話だけど。 この恋は、将来大人になって結婚したときに、ふと回顧して懐かしむくらいの、他愛もない昔話になるのかもしれない。と、風流染みたことを思ったこともある。 意味合いは違うけれど、例えば電車。 電車の座席に座っているとき、隣に綺麗な女性が座ってきたら、皆はどう思うか。 僕は、え、まさか僕のことを……と、思わず勘ぐってしまう。 しかし、女性は男性の心など知る由もなく、何とも思っていないはずだ。席が空いてたから、ラッキー、程度の行動。 ほぼ毎日、僕はそのような経験をする。 だけど実際、その女性の顔さえも、覚えているのは僅かでしかない。他は忘れてしまうのだ。 僕が彼女を好きでも、大人になればきっと忘れてしまう。淡い淡い恋だった。頭に残るのはそれだけだ。 彼女の知らないところで、一人の少年の恋は幕を閉じたのだった。
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