第3話 side runa

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私の訝しげな表情で何を思ったのか 「るなちゃんの可愛さも相当よ。いい! 二人とも! 」 そう言ってテンションを上げてきた。 「だいたいさぁ、名前に“ら行”使っていいのは美しい人だけ」 「はい? 」 ……意味が分からん事を熱弁し出す。 「ら行って、ちょっと一般人だと名前負けしちゃう。選ばれしら行の人達! 」 一般人って何だろ。 「私、自分の名前嫌いなんですけど」 佳子さんはものすっごく目を見開いて 「なんで!? めちゃめちゃ可愛い。むしろ、るなちゃんじゃないと“るな”は使えない!! 」 と、訳の分からないことを言った。 「馬鹿っぽいから」 「馬鹿じゃないんだから、いいでしょ?ギャップがいいのよ、ギャップが。よ! 高学歴!! 」 話すの、馬鹿らしくなってきた。 とりあえず、麗佳さんに対して何も思ってなさそう。 「私なんて佳子だよー。せめてこの漢字の読みが違えば、ロイヤルだったのに……。よしこって多いのよね、親世代くらいに。おばネーム」 思わず吹き出した。 「ぴったりですよ、佳子さん」 思わず素が出て、言ってからしまった。と、思った。年上の女性は、こういうの嫌いだ。そーっと、佳子さんを見ると、変わらずにこにこして 「可愛い! 毒はいてる~! 」 と、言った。 ……うん、今日も頑張ろう。 その日の麗佳さんとの同行は仕事以外お互い話さず、過ぎて行った。麗佳さんはいつも通りといえば、いつも通り。 だけど……これからあの狭いフロアでやっていかなければならない。麗佳さんは私の隣の席だし……。 ────最終日の同行後、コーヒーでもと私から誘った。 「ええ、良いわよ」 相変わらず抑揚もなく……でも断られなかっただけ……マシか。 「あの、ありがとうございました。ご指導頂いて……勉強になりました」 丁寧にお礼を言った。男性たちの営業より、同じ女性として参考になる部分も多かった。まぁ、目がハートになってる男性陣を……なぎ倒してたけどね。 「休憩時間なんだから、気を遣わないで」 「では、プライベートな質問をしても……かまいませんか? 」 「どうぞ」 「彼氏……いらっしゃるんですか? 」 そう。 これは……聞いておかなければならなかった。この人の美しさが脅威である事には変わらない。 麗佳さんは、ゆっくり顔をあげ、不審な目で私の顔を見た。確かに……唐突だったか。でも、それしか聞きたくないんだから、仕方ない。
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