第3話 side runa

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「私も気の強い性格がコンプレックスです。恋愛も同じく」 そう言うと…… 「大型犬が獰猛なら怖いけれど、ティーカッププードルの気が強くても、可愛いだけだわ」 と、おっしゃった。 「私はきっと……大型犬なのよね」 と、悲しげに。 いやいや、アンタ、大型犬だったとしてもコンクール総なめの手入れの行き届いた……アフガンハウンドだろ。 と思ったけど、言わなかった。もしかして……この人……じっと見つめていたら 「……あんまり、みないでくれる? 」 初日に言われたセリフ。 「あ、すみません」 「照れちゃうでしょ? 」 「はい? 」 「だって、るなちゃん、ものすごい可愛いでしょ? 」 「……あ、ありがとうございます」 「そんな可愛い顔でじっと見られたら照れちゃうじゃない」 分かりにくっ。この人……そして……ド天然だな。ああ、でも可愛いや。佳子さんの言うとおり。 ──後日、麗佳さんは 「ごめんなさい、プードルは比較的温和らしいの。だから、チワワとか、スピッツはどうかしら? 同じ様に、可愛いわよ」 と、言ってきた。 いや、どうでもいい。そこ。笑いを堪える私に、不思議そうな顔をして覗きこむ。調べたのか……わざわざ。 ──その数日後 立ち上がって間もない営業部はバタバタして余裕がなく歓迎会もしてあげられないから。そう言って、佳子さんと麗佳さんが“ようこそ”の意味を込めて飲みに連れてってくれた。 女性との繋がりを避けてきた私に取って、貴重かつ……こそばゆい時間だった。 お酒を飲むと、佳子さんは益々陽気に。麗佳さんは……色気を撒き散らし。可愛さもしかり。 あー……駄目だな。麗佳さんは飲ませたら。12日間に及ぶ同行で主要取引と顔見知りになった。会う人会う人、お酒の話題が出ると不自然じゃない程度に伝えた。 “麗佳さんは体質的にお酒が駄目だ”と。妙な身内感が芽生えていた。 いつの間にか……かつて封印した、無口さも毒舌も解放した。ここの人達は、受け入れてくれるから。つまり……私は本性をさらけ出した。プライベートじゃなく、会社の同僚にっていうのが不思議だけど。 だけど、この二人を知って、益々脅威だった。なぜなら、この二人が魅力ある人なのは 私が一番、わかっているから。 そして、この二人が恋敵になれば……どちらも大切な二重の苦しみになるから。 だから、まだ言わない……今は。私が……宮司悠人のことを好きな事は。
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