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久しぶりに自分の家から出勤したせいで、ノーチェックだった。
──とりあえず、定時までに顔を見ておきたい。
無理矢理用事を作って自分の所属する部署の階をスルーして、1つ上の階へと足を運んだ。
「回りくどいんだよ、お前」
中野にそう言われ、目的はバレてる。
「……だってさ、今朝会えてないんだもん」
「知るか! どうせ同じ所、帰んだろ。貸せ、それ」
そう言って、全然どうでもいいカモフラージュ書類を私の手からひったくった。
「……あ、おはよう。今からそっち行こうと思ってたんだよね」
そう言って、どこからか帰って来たのは、私の悠さん。
まだ、ハッキリとはそっちを見れていない。
中野が後ろ向きに親指を立てて
「さっさと行け」
と言った。俯いたまま、悠さんと下の階へと行く。
悠さんは勿論、私に会いに営業部へと行こうと思っていた……訳ではない。
仕事で、だ。
ちっ、公私混同しない奴め。
下の階に到着すると、漸くチラリと悠さんの方に目をやった。
彼はにっこりと、いつもの様に笑った…
のは、いいけど……
いつもと違っ……
「ギャー! な、な、ど、どうしたんですか、悠さん!!」
「え、ああ。今朝コンタクト破っちゃったんだよね。だから……今日仕事帰りにコンタクト作りに行ってくるよ。ちょっと度も合ってなかった気がするし……丁度良かったかな」
眼鏡姿のかっこよすぎる顔でそう言った。
「良くない、全然丁度良くないわ! バカなの!? 何? 何? 何!? 何の用なの、営業部に。帰って! 早く!」
「……え、ほら……仕事。ここ、会社だからね」
「まだ、定時なってない」
悠さんが時計を確認した。
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