7466人が本棚に入れています
本棚に追加
──直帰予定の営業先から、猛ダッシュでその場所へ向かった。
「コンタクト作るくらい、一人で行けるよ」
悠さんはそう言ったけど
そんな問題じゃない。
そういう所の受付は美人だと決まってる。
視力検査だって、スタッフとの距離が近い。
ダメダメ。絶対に。そんな危険な場所に悠さんを一人で行かせるなんて、とてもじゃないけど、私には出来ない。
ダッシュしたというのに、既に遅し。
外で待ってる悠さんの姿。
「お疲れ様、こっちも丁度終わったよ」
そう言ってにっこりと笑った。
急いで、そこの窓に張り付いて中を覗いた。
……よく見えない。
「わ、何してんの」
「受付の人、美人でした?」
「……いや、男性だったよ」
なんだ、男か。
「悠さん、今度から、絶対ここ以外行かないで下さい」
「ああ、うん。ついて来ないでね」
「何で!?」
「スタッフが、男性ばっかりだからだよ?」
そう言ってにっこりと笑った。ぼっと顔が熱くなる。
「ん、行こうか」
そう言って差し出された悠さんの手に自分の手を絡める。
……幸せだ。
「何食べる?」
「さっさと、帰りましょう!」
「……そうだね」
……幸せだ。
「て、手伝います」
「はは、いいよ。ビール冷やして来たからね」
「悠さーん!大好き」
「はい、はい」
「悠さんは?」
「……超好き」
「おお、ボキャブラリー増えましたね」
『超』だなんて。
……超好き。
ああ、これでビール2杯はイケる。
悠さんは、1日に何回聞いても
「好きだよ」って
言ってくれる。
その“好きだよ”が、例え何回目でも
本当に“好き”なのが分かる、気持ちのこもった言い方で。
……超好き
その、言い方が超好き。
幸せ、だ。
「一応、言っておくけどね、君より外見に恵まれた女性は、そうそういないよ」
「悠さんが、どう思うか以外は興味ありませんよ。私は」
そう言うと
「ああ、可愛いと思ってるよ、外見だけじゃなくね」
「いやー、私が私で良かった!」
あー、もう。家まで、走りたい。
さっさと抱きつける場所へ行きたい。
ここまでも走って来たけれど。
だけど、ここで体力使わせたら
抱いてくれない可能性が出てくるので
……我慢。
最初のコメントを投稿しよう!