番外編その1

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──直帰予定の営業先から、猛ダッシュでその場所へ向かった。 「コンタクト作るくらい、一人で行けるよ」 悠さんはそう言ったけど そんな問題じゃない。 そういう所の受付は美人だと決まってる。 視力検査だって、スタッフとの距離が近い。 ダメダメ。絶対に。そんな危険な場所に悠さんを一人で行かせるなんて、とてもじゃないけど、私には出来ない。 ダッシュしたというのに、既に遅し。 外で待ってる悠さんの姿。 「お疲れ様、こっちも丁度終わったよ」 そう言ってにっこりと笑った。 急いで、そこの窓に張り付いて中を覗いた。 ……よく見えない。 「わ、何してんの」 「受付の人、美人でした?」 「……いや、男性だったよ」 なんだ、男か。 「悠さん、今度から、絶対ここ以外行かないで下さい」 「ああ、うん。ついて来ないでね」 「何で!?」 「スタッフが、男性ばっかりだからだよ?」 そう言ってにっこりと笑った。ぼっと顔が熱くなる。 「ん、行こうか」 そう言って差し出された悠さんの手に自分の手を絡める。 ……幸せだ。 「何食べる?」 「さっさと、帰りましょう!」 「……そうだね」 ……幸せだ。 「て、手伝います」 「はは、いいよ。ビール冷やして来たからね」 「悠さーん!大好き」 「はい、はい」 「悠さんは?」 「……超好き」 「おお、ボキャブラリー増えましたね」 『超』だなんて。 ……超好き。 ああ、これでビール2杯はイケる。 悠さんは、1日に何回聞いても 「好きだよ」って 言ってくれる。 その“好きだよ”が、例え何回目でも 本当に“好き”なのが分かる、気持ちのこもった言い方で。 ……超好き その、言い方が超好き。 幸せ、だ。 「一応、言っておくけどね、君より外見に恵まれた女性は、そうそういないよ」 「悠さんが、どう思うか以外は興味ありませんよ。私は」 そう言うと 「ああ、可愛いと思ってるよ、外見だけじゃなくね」 「いやー、私が私で良かった!」 あー、もう。家まで、走りたい。 さっさと抱きつける場所へ行きたい。 ここまでも走って来たけれど。 だけど、ここで体力使わせたら 抱いてくれない可能性が出てくるので ……我慢。
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