番外編その1

8/8
前へ
/393ページ
次へ
しばらくは、俺のマンションで二人で住む。 以前、彼女が大きなベッドが欲しいと言っていたので、この日はベッドの下見に。 なのに、今と変わらない大きさのベッドばかりを見ている彼女に 「ねぇ、子供が出来た時の為に、それなりの大きさが必要かな? それとも、子供が出来たら落ちないように布団の方がいいのかな。……そうなると、和室も必要か……」 「……川の字で寝るやつですか」 「うん、そうだね」 楽しみだな、きっと……凄く可愛い。 「……真ん中、私ですよね?」 「……ん? 子供……じゃないかな?」 「……じゃあ、今のままでいい」 ……また、よく分からない事を。 真っ赤になって、俯いた顔を上げると 「は、悠さんの横は、譲りませんからね!」 そう言った。 「俺の、子供だよ? 俺のミニチュア……」 「は、悠さんの!?」 いや、彼女に似るかもしれないけど。 しばらくの沈黙の後 「絶対、真ん中は譲りませんからねっ!」 今度はさっきと違う意味だろうけど…… 強い口調でそう言った。 「……ああ、うん」 いいや、もう。 可愛いだろうな、きっと。彼女に似た方が。 「ああ、でも悠さん、子供に夢中になるんだろうなー。嫌だなぁ。私、二番目とか。私のご飯より、先に子供の離乳食作るんだろうなぁ」 ……あ、離乳食も俺が作るんだ。 うん、まあ、楽しみだな。 「先に、作ってあげるから、今はベッド決めようか」 そう言って、大きめのベッドが展示されてる方へと促した。 「悠さん、熟睡したらあっち向く傾向にあるんですよねっ、私に背中向けちゃうの。あ、勿論ですね、あなたの背中も大好きで、今迄はスーツバージョンの背中を散々見ては来てるんですけど……パジャマバージョンはレアで。けど、熟睡してちょっと開いた無防備な口とか……あー、いつもこっそりベッドから抜けて、見てるんですけどね、たまにはこっち見て寝て欲しくもあり、そうなると寝返り出来ないくらい狭いベッドの方がいいのかなーとか……色々考えて……」 ……見過ぎ。 俺本人以上に、俺を知っていて、尚且つ、まだ俺を知りたいと思ってくれる。 ここまで好きになってくれる人は、もう二度と現れないだろうな。 いや、彼女だけで……十分。 「起きてる時に、正面から見てね。はい」 まだ喋り続けている彼女に そう言って顔を近づけた。 「ギャー!」 ここ、家具売り場だっての。 真っ赤になって、俺の後ろに回り込んだ。 「ああ、背中、私服バージョンかっこいい。背面最高! 勿論前面も。最近は、手を繋いで歩くので、側面も素敵で……」 そう言って、大きな目を開いて俺の回りをゆっくりと一周する。 3Dスキャン。 ……帰ろう。 あー……今日も結局、何も決まらなかった、な。だけど、いいか。 「行こうか、るな」 真っ赤になって、下向いたから…… 手は繋いどく。 俺も、こんなにも好きになれて良かったな。 今日から、逆サイドに寝させるとしよう。 そう思いながら 今日も同じ家へと二人で向かった。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7466人が本棚に入れています
本棚に追加