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考えてみたら、理不尽だ。
同じ様に仕事をして帰って来て、家の事は全部悠さんがしてくれて……
何もかも悠さんにして貰って
『愛が足りない』
なんて言う女。
それは……苛ついちゃうよね、悠さんだって。
でもさ、だってさ……
幸せ過ぎて、波風の一つでも……
立た無いと、おかしくない?
「どうして、そう思うの?」
いつもの優しい顔で悠さんが聞いてくる。
「俺が、不安にさせてる?」
「み、美智さんと……全然違うんだもん!」
「は!?美智!?」
再びの悠さんのお怒り顔にたじろぐ。
「は、悠さん、美智さんには、ベタベタしてた。外でも。無意味に。鬱陶しいくらい」
「ああ……」
悠さんがそう言って
「君も、だけどね」
……え、何?
私も!?
無意味に?鬱陶しいくらい?ベタベタしてる!?
……その通りだ。
言われて俯いた。
「あの美容師の彼にね。何で?」
「えぇ!? 今更その話する?」
こっちも今更だけど。
京?してた……といえば、あの時か。
「何で?」
悠さんが、強い口調で聞く。まるで、逃がす気はないみたいだ。
一瞬で、逆転される。
「……不安だったから……かな?」
「うん、だよな。俺もそうだな、きっと。今は? 何か不安?」
「いや、今は不安でそうしてる訳じゃなくて……単にひっつきたくて……ひっついてるわけで……」
「うん、俺も。今は不安はない。……それに……」
「……それに?」
「30過ぎてんだよ、俺。だいたい、こっちからくっつく暇もないくらい君がここにいるわけだ。だから、不安が……ない」
にっこり笑っ悠さんが、私を引き寄せてそう言った。
「……それに、格好くらい、つけさせろ」
「と、言いますと?」
「6つも下の子に夢中だなんて、外では知られたくないだろ?」
そう言って、ちょっと……
ん?
ちょっと……赤くなった。
まぁ、私ほどじゃないけれど。
「さ、一緒にお風呂、行きますよ! 悠さん!!」
「ん、そうだね」
……波風の一つも、無いけれど……
穏やかな彼に、今日も溺れます。
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