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『作ってあげたい彼ごはん』
……なるほど。
美味しそうだな。
ビールに合うかな。若い女の子は見た目も気にするかな。
……しないな。するわけもないな。彼女は……。
待ち合わせまでに時間潰しに寄った本屋。
オウィディウスの1冊を棚に戻し、そんな本を手に取っていた。
買おうかな、これ。正直、とても楽しかった。
誰かに食事を作るのも、誰かとそれを食べるのも。
とにかく、とても楽しかった。
恋愛関係から“不安”というものが無くなったら、こんなにも……
「お、お疲れ様です。お、お待たせ致しました」
真っ赤になって、だけど……全身に嬉しさを滲ませて、彼女が到着した。
……俺の、彼女が。
「……は、悠さん……その本、えっと……」
「ああ、美味しそうだなって」
「……か、買います。そうですよね、普通は彼女が……か、彼女って私……えへ。じゃなくて、普通は彼女が……女性が作りますよね」
「ああ、さぁ、どうだろうね。“普通”じゃないくらい、可愛いからね、君は。さて、何食べたい? 照り焼きチキンか、鰤の照り焼きならすぐ出来る。他のがいいなら、買い物して帰ろうか」
「お買い物して帰りましょう! 明日ゆっくり出来るように、ね?」
「……そうだね」
彼女の優先順位は……何よりも、俺。
お陰で、本も、テレビも
全く時間がとれなくなってしまった。
なのに、とてもそれが楽しい。
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