番外編その2

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当たり前に年は巡り、今年も無事に新入社員を各部署へと見送った。 毎年、毎年、毎年…… 「顔でとってるのか」 と、聞かれた後は 営業部の人達の容姿の話。その中で必ず言われる。 『めちゃめちゃ可愛い、“あの人”』 そう言われた時の複雑な気持ち。 中条さんは吉良君がガッチリ前にいるわけで、佳子ちゃんも然り。 そろそろ、あの二人と新入社員では、年も離れて来た。結婚してたらそんな目でも見られなくなるだろう。 だけど……彼女は若く見える。 それこそ、新入社員って言ってもいいほどの童顔だ。小柄だしな。 ……わざわざ、『俺の彼女なんだ』とも言えない。 去年までは、『めちゃめちゃ可愛い、あの人』なんて言われても『そうだね』って済ませられたのにな。 ……複雑。 ……この日も一緒に家に帰ると、直ぐ様彼女が言った。 「悠さん、そろそろ中野に引き継がないんですか!? 新入社員の事とか、人事」 「んー、そうだね。中野くんは総務の核になって来たしなぁ。人事は結局……僕かなぁ。あ、新しく入った子に引き継ぐというか、今後一緒にすることになるかもしれないね」 「じょ、じょ、女子ですか!? 今までは、中野だから、我慢してたのに、女子とマンツーマンとか!」 「……いや、まだ……どうだろ……」 「嫌だぁ。若くて、可愛い子とマンツーマンなんてぇ」 「……」 ふっ、おかしい。 躊躇なく、ぶつけてくる謎の心配。 「えぇ!? 悠さん、何笑って……ひどい!」 「ごめん、ははは!」 彼女より容姿に恵まれた女性は、なかなかいない。それなのに心配する。 俺より、自分の方がモテるだろうに。 ……だけど、お陰で、俺の嫉妬心が飛んで行った。 人事……か。 あの時、彼女を選んで良かったなって思う。 今、こうしていられるのだから。
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