番外編その2

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全く……そろそろ飽きてもいいくらいの年月を費やしているのに 飽きるどころか、慣れもせず、赤くなっては、俯く。 そのくせ妙に……困らせる。毎日、堪らない程の可愛さで。 「家に帰ったら、ここは君だけの場所だからね」 そう言って、俺の膝に座る彼女を後ろから抱き締めて細い首に唇を寄せる。 ぐりんと俺の方を向くと、俺の首に手を回し 「好きです、悠さん」 いつものようにそう言う。 近くで見ると、とんでもなく可愛い。 「私以外は、可愛いって言わないで!」 ……言わないというか…… この顔見慣れちゃうと…… 「……言えないよね」 俺の言葉に真っ赤になったものの、俯かないのは……キスをして欲しいから。 「俺も、好きだよ」 そう言って、何度目だろうと、気持ちが高まって、キスをする。 こうやって、毎日一緒過ごして、一緒に眠って、一緒に出勤する。 会社の前で繋いだ手を離すのに 寂しくないかと言われたら嘘になるけれど 会社を出る時にまた繋げる事を知っているから 平気、なんだよね。 願わくば、新入社員には早く気付いて欲しくもある。 “俺の”だって。 なんて……ちょっと大人気(おとなげ)ないかな。
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