7392人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
「俺達の日は、うんっと、幸せな日だから、笑って欲しいなぁ……」
感極まって、ここで泣き出す彼女にそう言った。
どうして幸せなその日に、笑わずに泣くのだろうな。
彼女と気持ちが通じた時から想われる幸せを知った。満たされる幸せを。
多分、泣くだろうな。彼女も、彼女の身内も
俺も、俺の身内も
もれなく来てくれた人たちも。安堵と幸せの中に泣くだろうな。これまでと、これからを想って。
沢山の人たちのお陰で……その日を迎えられた事を。
一先ず、さっさと試着を終えようとする彼女を見て
「次回、もう一度構いませんか? 僕の方は今日決めますので」
そうスタッフの方にお願いした。
それから……
平常心を失った彼女に
「俺はお色直しいりません」
そう言って
彼女が持って来た俺に着せるつもりの
スコットランドの民族衣装のような柄のタキシードを返した。
準備にとても時間がかかりそうだけど……
その日を迎えられる幸せに目を細めた。
最初のコメントを投稿しよう!