番外編その3

8/8
7392人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
「俺達の日は、うんっと、幸せな日だから、笑って欲しいなぁ……」 感極まって、ここで泣き出す彼女にそう言った。 どうして幸せなその日に、笑わずに泣くのだろうな。 彼女と気持ちが通じた時から想われる幸せを知った。満たされる幸せを。 多分、泣くだろうな。彼女も、彼女の身内も 俺も、俺の身内も もれなく来てくれた人たちも。安堵と幸せの中に泣くだろうな。これまでと、これからを想って。 沢山の人たちのお陰で……その日を迎えられた事を。 一先ず、さっさと試着を終えようとする彼女を見て 「次回、もう一度構いませんか? 僕の方は今日決めますので」 そうスタッフの方にお願いした。 それから…… 平常心を失った彼女に 「俺はお色直しいりません」 そう言って 彼女が持って来た俺に着せるつもりの スコットランドの民族衣装のような柄のタキシードを返した。 準備にとても時間がかかりそうだけど…… その日を迎えられる幸せに目を細めた。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!