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でた、でたよ。何このなっがい列!
最後尾に並んだ時の後悔ったらなかった。うかつだった。よく考えたらわかること。カフェなんて、カップルか女同士に相場は決まってる。誰かが悠さんに惚れたらどうしよう。だって、こんなにかっこいいんだもん。見るな、見るなよ、減る!私の悠さんなんだからね。
「……どうしたの、殺気だってるけど。怖い顔したら、可愛い顔が台無しだよ? 」
「はっ、可愛くなんてない……ん? 」
見上げると、悠さんは
「可愛いよ」って笑った。ぶわっと顔に血液が集まる。
「駄目、こんな所で笑わないで、悠さん。この列の女性たちがあなたを好きになっちゃうでしょ!! 」
悠さんは愛おしい目を見開いて真っ赤になった。えー、赤面かわいー。
「ちょ、君は何言って。声が大きいって。お願いだから黙って。あのね、この列には本当にかっこいい人が少なくとも3人はいるから。頼むよ」
「は? あなたよりかっこいい人なんていませんよ」
「……真顔で何言ってんの。君、営業部の人間でしょうが、」
「あなたに比べれば、大福みたいなもんです」
悠さんは顔を両手で覆って黙ってしまった。そうそう。そうやって顔を覆っていてください。しめしめ。
「いや、もういいや。ありがと。でも、二人の時以外は言わないで」
「はあ、そうします」
だから早くお家に帰ろうって言ってんの。でも本当なのに。悠さんは顔を覆った手をどけてしまったので、私が体を張って悠さんの顔を隠そうと背伸びしたが、小柄な私では悠さんの顔まで届かなかった。チッ。見るなよ、誰も。
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