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「悠さん、パーカーでも着てくればよかったですね。そしたら、顔を隠せたのに」
「はは、あのね、誰も俺の顔なんて見てないよ。見られるのは君の方だろ」
「はぁ、私? 興味ないですね。私の顔は悠さんを見るためについてるんです! 」
悠さんは諦めたように笑ったけど、
「じゃあ、しっかり見ていてね」と見つめ返してくるので私は街中で危うく気絶するところだった。
やっとこさ、回って来た順番で悠さんは嬉しそうだった。はー、嬉しそうな悠さん、かわいいぃ。
「ほら、俺を見てないで、メニューを見て」
「嫌ですよ、メニューなんて」
「……うん。じゃあ、君に似合いそうなの、頼んでおくね」
と、悠さんが頼んでくれたのは桜餅といちごのショートケーキ。
「可愛らしいチョイスですね」
「うん。君はいちごのショートケーキって感じ。あと、桜餅」
ああ。ピンクね、ピンク。だから、こんな性格ってわかっても悠さんの中での私のイメージはピンクでふりふりしているらしい。
「あ、もうひとついい? せっかくだしコラボの」
と、クリーム大福を追加した。
「ああ、美味しそうですね」
「うん。さっき君が大福って言ったからたべたくなっちゃった。俺、大福好きなんだよね」
へえ、悠さんのことでまだ知らないことがあったなんて驚きぃ。悠さんは大福が好き、と。
「ちょ、ちょっと悠さん! 好きって、私と大福どっちが好きなんですか!!? 」
悠さんが慌てて私の口を塞いだ。やだ、悠さんの手が私の唇に……。私も悠さんも真っ赤になった。
だけど、大福、許さん!!
悠さんが全部半分こで「あーん」してくれたので、大福は許してあげることにする。
「もちろん、君のほうが好きだよ」
大福を味わいながら、悠さんが爽やかに笑った。大福、なんて美味しいの。私は至極満足した。
―――――end
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