第1話 side runa

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「ま、みんなで行く? せっかくだし」 事もあろうか宮司さんはそう言った。 二人で行くのはどうかと思ったのか、皆に気を使ったのか……ガッカリはしたけれど、ホッともした。 「え~、ダメですよ。ピタリ賞の意味ないじゃないですか、僕らは僕らで親睦深めに行きますので二人でどーぞ」 恐らく……もう気づいているのだろう。 私の気持ちに。バカっぽいのに妙に勘のいい男がそう言った。 「じゃあ、そうしよっか。いい? 」 宮司さんは、私と他の人たちどちらにも確認するように言った。私はただ、頷いた。逸る鼓動にそれが精一杯だった。 「綾さん、ちょっと出ます。みんな、このまま帰します」 宮司さんは、年上らしい女性にそう、声をかけた。 「あ、はーい。皆さんお疲れ様でした」 「ありがとうございました。失礼します」 そう言ってみんなで会社を出た。 会社を出てしばらくすると、他の皆は別の方向へと向かった。 「ここでいい? 」 その近くのカフェに、私と宮司さんは二人で入った。 「仕事じゃないからね」 そう言って私を奥の席に座らせてくれた。 「何飲む? 食べてもいいし」 「カフェラテを」 彼の前で食べるなど、到底無理だった。 「相原さんさぁ……知ってた? ……俺の年」 じっと見透かされそうな目で見つめられた。 「はい」 正直にそう言うと 「あはは! そっか、やっぱり。うん、責めてるんじゃないよ。そっかなぁと思って……でも、知ってたなら……」 わざと、当てたのは、彼とお茶したかったからだと……見透かされたのだろうか。 「少し、下の年齢を言うべきでしたか? 」 「うん、そうだね。女性ならそれが喜ばれるかとしれない。……男性なら貫禄と見られたくて、上を言った方が喜ばれる時もあるよ。どっちがいいか……その時その時かなぁ。難しいよね、年齢って」 「宮司さんは? 」 彼はまた私をしっかりと見て 「どっちだと思う? 」 仕事じゃない。そう言いながらも見る目を養えと言うことだろうか。 「わかりません。でも、少し童顔だなとは思いました」 「そうかな? 」 「それより……私は勝ちたかったので」 私の言葉に少し驚いた顔をすると、彼はまた、にっこりと爽やかに笑った。飽きもせず、心臓が跳ね上がる。 「じゃあ、ケーキくらいつけてよ。キライ? 」 「好き……です」 あなたが。そう言ってしまいたかった。
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