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「ま、みんなで行く? せっかくだし」
事もあろうか宮司さんはそう言った。
二人で行くのはどうかと思ったのか、皆に気を使ったのか……ガッカリはしたけれど、ホッともした。
「え~、ダメですよ。ピタリ賞の意味ないじゃないですか、僕らは僕らで親睦深めに行きますので二人でどーぞ」
恐らく……もう気づいているのだろう。
私の気持ちに。バカっぽいのに妙に勘のいい男がそう言った。
「じゃあ、そうしよっか。いい? 」
宮司さんは、私と他の人たちどちらにも確認するように言った。私はただ、頷いた。逸る鼓動にそれが精一杯だった。
「綾さん、ちょっと出ます。みんな、このまま帰します」
宮司さんは、年上らしい女性にそう、声をかけた。
「あ、はーい。皆さんお疲れ様でした」
「ありがとうございました。失礼します」
そう言ってみんなで会社を出た。
会社を出てしばらくすると、他の皆は別の方向へと向かった。
「ここでいい? 」
その近くのカフェに、私と宮司さんは二人で入った。
「仕事じゃないからね」
そう言って私を奥の席に座らせてくれた。
「何飲む? 食べてもいいし」
「カフェラテを」
彼の前で食べるなど、到底無理だった。
「相原さんさぁ……知ってた? ……俺の年」
じっと見透かされそうな目で見つめられた。
「はい」
正直にそう言うと
「あはは! そっか、やっぱり。うん、責めてるんじゃないよ。そっかなぁと思って……でも、知ってたなら……」
わざと、当てたのは、彼とお茶したかったからだと……見透かされたのだろうか。
「少し、下の年齢を言うべきでしたか? 」
「うん、そうだね。女性ならそれが喜ばれるかとしれない。……男性なら貫禄と見られたくて、上を言った方が喜ばれる時もあるよ。どっちがいいか……その時その時かなぁ。難しいよね、年齢って」
「宮司さんは? 」
彼はまた私をしっかりと見て
「どっちだと思う? 」
仕事じゃない。そう言いながらも見る目を養えと言うことだろうか。
「わかりません。でも、少し童顔だなとは思いました」
「そうかな? 」
「それより……私は勝ちたかったので」
私の言葉に少し驚いた顔をすると、彼はまた、にっこりと爽やかに笑った。飽きもせず、心臓が跳ね上がる。
「じゃあ、ケーキくらいつけてよ。キライ?
」
「好き……です」
あなたが。そう言ってしまいたかった。
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