第4話 side runa

4/6
7357人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
「さ、飲みに行きましょ!! みんなで」 大きめの声で言った。 「うわ、悪い俺、こんな時に今から出張前泊なんだわ」 と、大友さん。 「俺も……接待」 と、吉良さん。 そうなると…… 「いえいえ、お構いなく」 佳子さんはそう言ったけれど。 「私は、ご一緒させていただきます」 絶対、大友さんと吉良さんにつつかれたのだろうAIのような結城さんがそう言った。 「いやいやいやいや、滅相もございません。せっかく定時に上がれるのに……」 佳子さんは顔の前で手を振った。 佳子さんは、結城さんに敬語だ。 その気持ちはわからなくもない。 それくらい……まあ、抑揚のない人だ。結城さんは。 「私がいると……ご迷惑ですか? 」 「いえいえ、ご迷惑をおかけするのはトナカ……私で」 トナカ? 「では、ご一緒させて下さい」 「そうしましょう、佳子さん。こういう時、異性がいて下さると助かりますよ」 佳子さんにそう言った。 結城さんが、慰めたりすることはないだろうけれど…… だけど、異性って時にはそこにいるだけで、慰めになる。 イケメン好きの佳子さんには尚更だ。 佳子さんは、頷いた。 フロアを出る前に、結城さんは他の男性陣に何やら言われていたけれど……。 まぁ、何というか……。人間向けの アドバイスされてるんだろう。 店は……個室の方がいい。 落ち込んでる佳子さんが、また泣き出さないように。 ──佳子さんに、奥の席を勧めると…… 各々にドリンクを注文する。 佳子さんは、急に両手で顔を覆った。 「大丈夫ですか? 」 慌てて顔を覗き込む。 「ご、ごめんなさい!! あー、もう……恥ずかしい。職場で泣いちゃうなんて……」 「大丈夫よ、定時すぎてからだし。頑張ったよ! 」 届いたドリンクが行き渡ると 佳子さんがその日の昼休みの出来事を話し出した。 29歳の誕生日を来週に控えて振られたと。 「うわ、それ昼休憩にする話じゃないですね……」 なぜ、昼休みに? 「よっぽど、忙しいのね。でも、昼から仕事があるの、考えて欲しいよね」 「お互い気持は変わらないわけだし、転勤さえなければ……せめてもう一度話し合ったらどうですか? 」 佳子さんの切なそうな瞳に……そう言った。 修復可能じゃないのかなぁと。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!