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「さ、飲みに行きましょ!! みんなで」
大きめの声で言った。
「うわ、悪い俺、こんな時に今から出張前泊なんだわ」
と、大友さん。
「俺も……接待」
と、吉良さん。
そうなると……
「いえいえ、お構いなく」
佳子さんはそう言ったけれど。
「私は、ご一緒させていただきます」
絶対、大友さんと吉良さんにつつかれたのだろうAIのような結城さんがそう言った。
「いやいやいやいや、滅相もございません。せっかく定時に上がれるのに……」
佳子さんは顔の前で手を振った。
佳子さんは、結城さんに敬語だ。
その気持ちはわからなくもない。
それくらい……まあ、抑揚のない人だ。結城さんは。
「私がいると……ご迷惑ですか? 」
「いえいえ、ご迷惑をおかけするのはトナカ……私で」
トナカ?
「では、ご一緒させて下さい」
「そうしましょう、佳子さん。こういう時、異性がいて下さると助かりますよ」
佳子さんにそう言った。
結城さんが、慰めたりすることはないだろうけれど……
だけど、異性って時にはそこにいるだけで、慰めになる。
イケメン好きの佳子さんには尚更だ。
佳子さんは、頷いた。
フロアを出る前に、結城さんは他の男性陣に何やら言われていたけれど……。
まぁ、何というか……。人間向けの
アドバイスされてるんだろう。
店は……個室の方がいい。
落ち込んでる佳子さんが、また泣き出さないように。
──佳子さんに、奥の席を勧めると……
各々にドリンクを注文する。
佳子さんは、急に両手で顔を覆った。
「大丈夫ですか? 」
慌てて顔を覗き込む。
「ご、ごめんなさい!! あー、もう……恥ずかしい。職場で泣いちゃうなんて……」
「大丈夫よ、定時すぎてからだし。頑張ったよ! 」
届いたドリンクが行き渡ると
佳子さんがその日の昼休みの出来事を話し出した。
29歳の誕生日を来週に控えて振られたと。
「うわ、それ昼休憩にする話じゃないですね……」
なぜ、昼休みに?
「よっぽど、忙しいのね。でも、昼から仕事があるの、考えて欲しいよね」
「お互い気持は変わらないわけだし、転勤さえなければ……せめてもう一度話し合ったらどうですか? 」
佳子さんの切なそうな瞳に……そう言った。
修復可能じゃないのかなぁと。
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