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「あれだけの攻撃を受けてもなお動きを止めないとは……」
砲火に怯むことなく歩みを続ける巨体に軍部は震撼した。
出血はおろか、怪獣の皮膚には傷ひとつついていなかった。
「あれは何なんだ……? ミサイルの直撃を受けてなぜ平気なんだ?」
指揮官は青ざめた。
進攻を止めることができなければ発電所が踏みつぶされてしまう。
それだけではない。
あの怪物が都市に向かえば被害はさらに拡大する。
少なくとも有効な打撃を与えなければ最悪、国が滅ぼされるかもしれない。
「傷を負っている様子は……ない。宇宙から来た生命体なのか……? それとも――)
人間の手でどうにかできる相手とは思えなかった。
だが、まだ手はある。
「全機撤退せよ。これよりKL-ONを使う」
「司令、本気ですか!? あれは戦争の抑止力として保有する大型ミサイルですよ? もし使用したら……」
KL-ONは現在、多くの国家が保有する大量破壊兵器だ。
着弾すれば周囲に多大な破壊をもたらす。
物理的な被害だけでなく大気汚染をも引き起こす絶大な威力は、たった1発で世界の均衡を容易く崩してしまう。
ゆえに国家間は互いにこれを用いないという前提の元で保有している。
「通常兵器では効果がないんだ。それにこれは我が国の安全のためであり、他国への攻撃に用いるものではない」
「ですが――」
「あれを止めなければ我々は深刻な打撃を追うだろう。他に方法はない」
このまま見過ごせば怪獣は発電所群や都市部に移動してしまう。
そうなっては高威力の兵器の使用は難しくなる。
実行するのは今しかない、と指揮官は力説した。
未曾有の危機にあって、これこそが被害を最小限に抑える方法なのだと。
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