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世界連合はこの判断を後押しした。
通常兵器が効かない巨大生物を野放しにしておくワケにはいかない。
他国を攻撃する目的ではないとしてKL-ONの使用が国際的に認められたことになる。
かくしてボタンは押された。
怪獣めがけて高高度から落下したミサイルは着弾とともに凄まじいエネルギーを放出した。
迸散する光と熱。
一瞬、周囲から音が消え、時間が止まったと思わせる静寂に包まれる。
直後に起こった大爆破は恐ろしい速度で大地をめくりあげ、山を削り、建造物を跡形もなく吹き飛ばした。
その威力は発電所群や市街地にまで及び、半径数十キロメートルの範囲には塵ひとつ残さなかった。
「………………」
熱が広がり、煤煙が風に巻き上げられたあと――。
「巨大生物、消滅しました!」
その報せに人々は快哉を叫んだ。
脅威は去った。
正体不明の怪物が消失したことで平和が戻ったのだ。
「あれはいったい何だったのでしょうか?」
「分からんな。死体の一部でも残っていれば分析くらいはできただろうがな……」
「目撃者によれば空から急に現れたそうですよ。普通の生物ではないと思います」
「まさか宇宙から来たとでも? まあ、広い宇宙にはあんな奴もいるのかもしれないな。恐ろしい話だが」
「そのほうがマシですよ。私にはあれは悪魔に見えましたよ。人類にとっての――」
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謎の巨大生物が消滅したことで人々は表向き、安全と平和を取り戻したように見えた。
しかしKL-ONの威力が実証されたことで、各国はこれを保有することへの正当性や有用性を主張。
未知の脅威に備えるという口実の元、軍拡競争は激しさを増した。
そして、やがて起こるのは――。
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