スーパームーンに手を伸ばして

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 そんな町の西にほうにある山へは、自転車でおよそ二十分ぐらいで着く。小学生や中学生の時はよく遊んだ山だ。坂道の道路を自転車で登っていって、山道に入ると徒歩になる。男の子たちと混じって探検気分で、森の中を散策した。  私たちはスーパームーンの噂を聞いて、その小中学生の頃の記憶が蘇ったのだ。  確かにあの山なら、すごく見晴らしのいい丘もあるから、スーパームーンが一番綺麗な位置で見られるかもしれない。しかもその場所は、私たちが小中学生の頃の仲間しか知らない。高校生になって、その場所へ行こうとするのは私たちぐらいだろう。なら、もしかしたらスーパームーンの特等席を独り占めできるかもしれない。  そんな期待を胸に抱いて、私は楓に誘われるままに翌日の放課後、学校終わりで山を登ってみたのだった。 「楓、本当にこっちなの?」  私は前方を歩く楓に呼びかけた。  山道を必死に登っていく。楓はバスケ部で鍛えられているからいいけど、私はそうはいかない。こっちは完全なインドア派で、もうすっかり山登りからは縁遠くなっているのだ。 「間違いないよ。こっち」  楓は自信満々に歩みを進めていく。お気に入りのウォーキングシューズが黄色と赤の鮮やかなカラーを私に見せつけてきている。  私はと言えば、単なる普段使いのスニーカー。楓の自慢の靴とは雲泥の差だ。 「ちょっと、足、痛い」  歩みを止め、太股をさする。  楓が振り返って、こっちに近寄ってきた。     
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