第2章

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しばらくの間、円華と話をしていると、階段を走り降りてくる足音が聞こえた。 その足音はバタバタと音を立てて玄関へ真っすぐ向かった。 「咲楽?どこに行くの?」 円華が声を掛ければ、返ってきたのは、 「うるさいなぁ。放っといてよ!」 という怒鳴り声だった。 思わず小さな声で、 「クソガキ」 とつぶやくと、円華が苦笑いを浮かべる。 玄関の扉が閉まると、家の中は静かになった。 「もうすぐ帰ってくるかしら…お父さんとお母さん」 暗い表情でつぶやいた円華の向こう側の壁に掛けられた時計に目を向けると、午後4時を回っていた。 この時は思ってもいなかった。 咲楽に会うのがあれが最後になるなんて。
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